SCOのふしぎ(その7) 安上がりに済ますには
廣兼正明の「アマチュアが一番・オーケストラ入門」に一例として挙げてある「アマチュアオーケストラの演奏会一回当たりの費用」の総額は127万円である。
SCOの予算はこれより一桁近く少ない。以下に内訳を対比して示そう。
<収入内訳(単位:万円)>
SCO | 他のオーケストラ | |
団員分担金(チケットノルマを含む) | 15 | 85 |
後援会補助 | 3 | 30 |
チケット一般販売 | 12 | |
広告料 | 5 | |
合計 | 18 | 132 |
<支出内訳(単位:万円)>
SCO | 他のオーケストラ | |
会場費 | 7 | 22 |
指揮者謝礼 | 50 | |
トレーナ謝礼 | 6 | |
エキストラ謝礼 | 1 | 16 |
プログラム等印刷費 | 1 | 25 |
出演者弁当代 | 5 | |
受付警備代 | 5 | |
雑費 | 1 | 4 |
CD、写真費用 | 2 | |
合計 | 18 | 127 |
SCOの場合、指揮者は「ただ」だし、エキストラはめったに雇わない。また、田舎なので会場費も安い。プログラムは印刷屋に頼まず自宅のプリンターで印刷して済ませる。練習会場も安いところを選ぶ。受付、録音、照明などの人はすべてボランティアである(ただしあとで飲ますという約束つ き)。
SCOの運営は「長屋の花見」のようなもので、「持っているものが持ち寄る」形式である。昨今の世の中は何でも組織化し、会議を開き、 規約を作り、監査を行うことが常識となっているが、SCOの運営には規約も監査もない。会議は飲み会で代行する。
こう言うと、「そんなたよりない運営では、役員が会費を着服したりするのを防げない」と言われるであろう。それに対しては「どう見ても 余剰金など出そうもない予算でやっているからいいんだ」と回答することになる。事実、突発的な出費はなかなか通常会計に納めることができず、いくらか累積赤字もかかえている。
このような「長屋の花見」的運営をするには、団員同士の信頼とともに、「私がこれこれをやりましょう」という自発的な申し出が不可欠である。幸い、SCOの団員は酸いも甘いもかみわけた大人ばかりなので、いまのところ問題は発生していない。
いやまったく、現代では、信頼などという言葉はたよりないものの代名詞になり下がってしまったが、せめて趣味のためのオーケストラなどは信頼を基本にした運営をやっても良いのではないだろうかと思う。そうすれば運営のための費用や労力を削減できるのである。
***補足***
SCOの予算例は当記事執筆当時の予算です。当時の会費は年3,000円でした。
さすがにやっていけなくなったので値上げし、今は年5,000円の会費で運営しています。