SCOのふしぎ(その6) あの人は第一バイオリンじゃなかったの

2015年05月12日 22:41

普通、オーケストラでは、第一バイオリンと第二バイオリンは演奏者が固定している。どうしても都合がつかないときは第一の人が第二を弾いたりするが、たびたび交代するものではない。

しかし、SCOの聴衆は、多くのバイオリニストが年毎に移動するのに気がつくかもしれない(管楽器の人はこのことを知らない人もあるようだから、気がつかなくても恥ではない)。実は、SCOでは原則として第一と第二は毎年交代することになっている。移動しないのはコンサートマスターの小林さんと、テクニック上第二バイオリンしか弾けない一部(?)の人である。もちろん、これらの人もテクニックが向上すれば当然交代する権利を得る。

なぜ交代するのか。

第一バイオリンには第一なりの役割が、第二バイオリンには第二なりの役割があり、それぞれに楽しみと苦労がある。せっかくオーケストラに参加しているのだから、できるならいろいろな場面を経験したほうが音楽人生を広くできるし、互いの立場もわかりあいやすい。たとえば、伴奏の第二が上手に弾くとメロディーの第一はとても弾きやすいというようなこともわかる。

第一は普通メロディーをとり、高音や細かいフレーズを弾く事が多く、高い技量を要求される。また、メロディーを弾くのに忙しく、タフでなければならない。古典派の曲では第一が休みということはほとんどなく、弾きっぱなしである。

一方、第二はあるときはメロディー、あるときは伴奏と多くの役割をこなす必要がある。けっこう複雑なリズムをこなさなければならないことも多い。メロディーと違って伴奏は単純だから楽譜上の現在位置を見失ってしまうとどこをやっているのかすぐにはわからず、「落ちてしまう」危険が高い。 また、音こそ低いが中間音を弾く必要があり、和声的に第一よりもむしろ難しい。他人に合わせることが多いため、個人練習では自分の役割を把握できない。等々。第二はある意味では第一よりも難しいのであるが、それはなかなか外部の人にはわかりにくい。

したがって、昨年第一バイオリンだった人が今年第二バイオリンを弾いていたとしても、別に降格になったわけではないのである。少なくともこのオーケストラにおいては。