第二バイオリンのこと

2015年05月14日 21:48

これはごく最近発見したことである。

従って十分検証されていないうらみはあるのだが、あまりに劇的に発見したので間違っていてもかまわないから書こうと思った。

モーツアルトのカルテットを支えているのは実は第二バイオリンなのである。

第二バイオリンに「遠慮せずにどんどんやれ」と言ったら、音楽が変わったのである。本当に新鮮で美しいモーツアルトができあがった。 (いやもちろん我々のレベルの話ですよ。)

音楽の三要素はリズム、メロディー、ハーモニーと言われる。そのうちの最も基本的な「リズム」を牛耳っているのは第二バイオリンなのである。ハーモニーはビオラに譲り、リズムの一部はチェロにおぶさることも多いとはいえ、第二バイオリンの地位が揺らぐとは思えない。

ところが、素人目には第二バイオリンというのは第一バイオリンの補助としか映らないことが多い。第二バイオリンの演奏者自信も、立場が弱いと思って いるらしく、第一バイオリンの影にかくれようとするし、第一バイオリンのテンポに合わせようとする。それではいけないのである。確かなリズムは第二バイオ リンに負っているのである。自信を持ってそれを刻まなければならない。

リズムがふらふらすると聴いている人も次の音の出が予想できなくなる。予想したタイミングで音が鳴る方が心地よいのである。もちろんたまには予想をはずすのもまた面白いが、それはたまにやるから良いのであって、いつもそうではいけない。

それは良いとして、じゃあ第一バイオリンはどうやって歌うのか。

それは一定のリズムの上で歌うのである。そんなことができるか、と言われるかもしれないがそうである。カラオケを聴いてみると上手な人は上手に歌 う。カラオケはあらかじめプログラムされたテンポで勝手に伴奏が進むのであるから、上手な人はその制約の中で上手に歌っているのである。

一定のリズムのなかでも多少の伸び縮みは実は可能である。のばしたい音符があるなら、その前後を縮めて、その音符をのばせばよい。また、名人はリズ ムだけで歌うわけではない。音色やちょっとしたビブラートのかけかた、音の立ち上がりなどをコントロールして実に多彩に歌う。我々にはなかなかまねはでき ないが、自分ができる範囲でも、それなりにいろいろやってみると楽しい。

第二バイオリンのことに話をもどそう。

第二バイオリンはリズムを刻むだけではなく、旋律の下をつけていく場合も多い。慣れない人は音程のイメージを作るのに相当苦労されるだろうと思う。 普通にバイオリンを習うとどうしても独奏の練習をするから、オーケストラに入ったりして合奏をするまでは「旋律の下なんて考えたこともない」という方も多 いと思う。まあそうだからといって卑下することはない。これも慣れである。旋律の下というのは難しいだろうけれども、第一バイオリンの下をうまく弾いて、 きれいに響いた時というのはすごく素敵である。モーツアルトの弦楽の曲にはバイオリン二部の美しいメロディーがそこここにたくさんある。ディベルティメン トのニ長調などを良く聴くと、この美しい場面に魅せられてしまう。

実際第二バイオリンほど多彩な演奏を要求される楽器もない。あるときはリズム、あるときは和音、あるときはメロディーが出て、それもどうかするとめ まぐるしく入れ替わる。攻撃も守備もゴールキーパーもやらされる、というようなものである。役割上で一番面白そうなパート、と言うなら第二バイオリンにと どめを刺すと思う。